オーストラリア在住スピチーセラピストが臨界期を気にしないわけ

「今しかない?」と思いがちなバイリンガル育児と臨界期
バイリンガル育児に取り組んでいると、よく耳にするキーワードがあります。
それが臨界期。
「〇歳までに英語を始めないと、もうネイティブのようには話せないんですよね?」
「幼児期を過ぎたらバイリンガルになるのは無理ですか?」
こんな不安を抱えている保護者の方も多いかもしれません。
でも、臨界期を「焦るべきリミット」ではなく、「ことばが自然に育ちやすい時期」として捉えると、少し気持ちが楽になります。
臨界期ってなに?
臨界期とは、「ある能力を自然に習得しやすい発達のピーク時期」のこと。
言語習得においては、一般的に 12歳ごろまでがその時期と言われています。
この間にことばにたっぷり触れることで、発音や音の聞き分け、文法パターンなどを無意識的・効率的に吸収することができます。
特に、0〜3歳は耳の力が急速に育つ時期。この時期に2つの言語を日常的に聞いて育つと、それぞれの言語特有の音を「違うもの」として自然に聞き分ける能力が育ちやすいとされています。
たとえば、日本語には存在しない英語の LとRの違い。
大人になってからだと聞き取りが難しいこの音の違いも、幼いうちから英語に触れていれば「別の音」として自然に認識できるようになることが多いです。
バイリンガル育児における臨界期のメリット
臨界期に2言語に触れることで得られる良いことはたくさんあります:
- 発音がナチュラルで、ネイティブらしくなる可能性が高い
- 文法の感覚が“理屈ではなく、体感”として身につく
- コードスイッチ(言語の切り替え)の柔軟性が育つ
- 聞く・話すだけでなく、読む・書く力にも波及しやすい
つまり、臨界期は“ことばの土台を広げる”大きなチャンスなのです。
臨界期を超えたら手遅れ?
そんなことはありません。臨界期はあくまでスタートを切りやすい時期。
その時期を過ぎたからといって、バイリンガルになれないわけではないし、言語の発達が止まるわけでもありません。
たとえば、7歳で新しい言語に触れてバイリンガルになる人もいますし、10代から学び始めて流暢になる例も多くあります。(私自身がこの例)
私はオーストラリアでスピーチセラピストとして働いていますが、英語を後から学んだ子どもでも、
しっかり聞いて、伝えて、やりとりができる力があれば、しっかり社会に溶け込み、学びを深めていけます。
ネイティブのような英語もいいけれど、もっと大切なのは、
- わからなかったときに「聞き返せる」力
- 「わからないって言ってもいい」と思える安心感と自信
- 相手と気持ちをやりとりできる実践的なコミュニケーション力
この「ことばを使って人とつながれる力」が、学校でも、友達との関係でも、そして将来の仕事や社会生活でも、一番の支えになります。
つまり、「発音が完璧じゃないからダメ」なんてことは全然ないんです。
臨界期に注目するあまり、
「もっと早く始めないと!」
「毎日同じ時間だけ日本語と英語を…」と焦ってしまう方もいます。
でも、子どもにとって一番大切なのは、「そのことばを使う意味があること」です。
- 英語で遊ぶ時間が楽しい
- 日本語の絵本を読んでもらえるのがうれしい
- 伝えたい気持ちを受け止めてもらえる
こんな経験の積み重ねが、2つの言語を話せるだけでなく使いこなす力へとつながります。
まとめ:臨界期は「焦る理由」ではなく「育ちのチャンス」
- 臨界期は、言語を自然に吸収しやすい時期
- 0〜3歳ごろは特に発音や聞き分けに大事な時期
- 過ぎたからといってバイリンガルになれないわけではない
- 一番大切なのは、子どもがことばに「安心できる経験」を積むこと





