バイリンガル育児の基本Q&A|スピーチセラピストが答えます

こんにちは。オーストラリアでスピーチセラピストとして働くMiwaです。
日本語と英語、2つの言葉の世界で育つお子さんについて、保護者の方からよくこんな質問をいただきます。
「2言語で話しているけど、遅れてる?」
「発達に特性があると、バイリンガルは難しい?」
この記事では、バイリンガルに関するよくある疑問を、スピーチセラピーの視点からわかりやすく解説します。
バイリンガルって何?
バイリンガル(bilingual)とは、2つの言語を理解し、使うことができる人のことを指します。
「どちらも完璧に話せる」必要はありません。
それぞれの言語で得意・不得意があっても大丈夫です。
たとえば:
- 家では日本語、学校では英語を話す子
- 両親が異なる言語を話す家庭
- 幼少期は英語中心だったけど、あとから日本語を学んだ人
いずれも立派なバイリンガルです。
バイリンガルにはどんな種類がある?
| 種類 | 説明 | 例 |
|---|---|---|
| 同時バイリンガル | 生まれたときから2言語を同時に学ぶ | 家で日本語+学校で英語 |
| 継続バイリンガル(逐次) | 1つの言語を習得したあと、もう1つを学ぶ | 日本で育ち、移住後に英語を習得 |
| 継承語バイリンガル | 家庭で使う言語(母語)を継承して学ぶ | 日本語を「家庭の言葉」として残す |
どのタイプでも、言語発達の土台(理解・語彙・文法・会話力)は共通しています。
バイリンガルになると言葉の発達が遅い?
いいえ。
「バイリンガルだから遅い」ということはありません。
2言語で育つ子どもは、それぞれの言語を状況に応じて使い分けるため、
一時的にどちらの言語も語彙が少なく見えることがあります。
しかし、**両言語を合わせた「総語彙数」**で見ると、
モノリンガル(1言語)と同じくらいの語彙力を持っていることが多いです。
例:
英語で “dog, car, ball”
日本語で「ごはん」「ねんね」「ブーブー」
合計すると、6語! → 発達は順調です。
発達特性があるとバイリンガルになれない?
なれます。
自閉スペクトラム(ASD)やDLD(発達性言語障害)など、
発達特性があってもバイリンガル育児は可能です。
むしろ、家庭の言語(母語)で話しかけることで
お子さんが安心して自分を表現しやすくなります。
研究でも、「家庭の言語を制限するより、自然な形で使い続けた方が良い」と報告されています。
(De Houwer, 2009; Paradis & Genesee, 2010)
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バイリンガルのメリット
バイリンガルで育つことには多くの利点があります。
- 認知的柔軟性:物事を多角的に考える力が育つ
- コミュニケーション力:多様な人と関われる
- アイデンティティ形成:家庭や文化とのつながりを保てる
- 将来の選択肢が広がる:進学・就職などで強みになる
どちらの言語も自分の一部と感じられることが、最も大切です。
バイリンガルをお家で育てるコツ
家庭でできる言葉育てのポイントをいくつか紹介します。
- 家庭では自然に母語で話す(無理に英語に切り替えない)
- 絵本や歌で毎日ふれる時間をつくる
- 「話しかける」より「会話を楽しむ」意識で
- 1つの言語で完結する活動を増やす(例:日本語で料理、英語で絵本など)
バイリンガル環境では、どちらの言語にも楽しい思い出を結びつけることが成功のカギです。
どんな時にスピーチセラピストに相談したらいい?
以下のようなサインがあるときは、相談をおすすめします。
- 2歳を過ぎても単語がほとんど出ない
- 3歳以降も文にならない(例:「ママ」「ブーブー」止まり)
- 話しかけに反応しにくい、質問が理解しづらい
- 英語も日本語も伸びがゆっくりで、本人も困っている
言語発達の問題は、早期に支援を始めるほど効果的です。
日本語・英語のどちらで困っているのか、両言語を見ながら支援計画を立てます。
まとめ
バイリンガル育児は、「どちらの言語を伸ばすか」ではなく
「どちらの言語でも安心して自分を表現できる環境をつくること」が大切です。
もし「少し気になるな」と思ったら、迷わずスピーチセラピストにご相談ください。
お子さんの言葉の世界を、安心と笑顔で広げていきましょう。
参考文献
- De Houwer, A. (2009). Bilingual First Language Acquisition. Multilingual Matters.
- Paradis, J., Genesee, F., & Crago, M. (2010). Dual Language Development and Disorders. Brookes Publishing.
- Grosjean, F. (2010). Bilingual: Life and Reality. Harvard University Press.
- Raising Children Network. Bilingualism and language development





